インタビュー

Etsushi Yoshikoshi
吉越 悦史

プロダクトマーケティング部門長

難しいからこそ面白い

Q. ジャパンワクチン(以下JV)は2012年にGSKと第一三共からの出向者だけで事業運営が開始されました。その後、2014年には皆さん一人一人が親会社に戻るか、JVに転籍をするかを選択しましたが、なぜJVに残る道を選んだのですか。

JVへの転籍を決意した最大の理由は、JVのワクチンビジネスが、日本の社会になくてはならないものになっていくと強く感じ、それを担う責任とやりがいを見出したからです。少子高齢化が進む昨今、日本の未来を担う赤ちゃんや、社会を支えてきたお年寄りが永く健康に過ごすことを助けるワクチンは、まさに社会全体にとって不可欠なものと考え、企業活動そのものが社会貢献に繋がると確信したことが、自分の決断の前提になっています。

会社設立当時から、日本では感染症予防ワクチンの開発・営業の専業企業は他に無く、あまり参考になる前例もありませんでした。当時は財務経理・IT部門長の職にありましたが、財務基盤の確立、長期的な事業戦略の策定において、多くの難題が想像をしていた以上のものでした。ただ、「新しい挑戦、ワクワクする挑戦をしたい」というのが私の信条でもあり、難しいからこそ面白味やチャンスがあると考えて、新しい環境に飛び込みました。振り返ってみると色々な壁がありましたが、自分としては新しいことを勉強し、色々な角度から考えたりすることが好きで、不安よりも知る楽しさの方が大きく勝っていたように思います。

「力を合わせて未来を守る」に込められた願い

Q. マーケティングに限らず、「治療薬」と「ワクチン(予防薬)」ではどのような違いがあるのでしょうか。

一番大きな違いは、『治療薬は患者さんに使われる』、『ワクチン(予防薬)は、その病気に罹患していない方に使われる』ということではないでしょうか。治療薬は、「症状や検査値が改善する」という効果が簡単にわかりますがワクチンを接種した皆さんが「その病気にかからない(症状が軽くて済む)」という効果を具体的に実感することが難しいのです。まさに「見えないものを見せる(感じてもらう)」ことが重要なのですが、大切なご家族一人一人が病気になってしまった時の重大さを理解してもらい、また社会全体の未来を健康で明るいものにしていきたい、究極的には、医療に携わる多くの方々と一緒に、その感染症自体をなくすことに貢献したいという思いを伝えていかなければなりません。JVのコーポレートスローガンである、「力をあわせて未来を守る」はまさにこの願いを成文化したものであり、多くのステークホルダーと一緒にこれを実現していくという強い決意を示しています。

それと、もう一つ避けては通れないことがあります。化学合成的な手法で製造される多くの治療薬に対して、ワクチンは生物学的製剤である為、相対的に安定して製造し供給するハードルが高いということがあります。現在も一部の製品は潤沢な供給ができずに多くの皆様にご迷惑をおかけしている事実があります。

今後も私たちがワクチン専門企業としての責任を果たすべく、粘り強く取り組まなければならない宿命的な課題ですが、ステークホルダーとともに、この困難を一歩一歩乗り越え、会社として成長していかなければならないと考えています。

チームのアウトプットを進化させる為には、サイエンス、事実や根拠をベースとした議論と相手の立場の理解が大切

Q. プロダクトマーケティング部門には3つのグループが属し、20名以上のメンバーがいますが、吉越さんが考える組織やメンバーのマネジメントのポイントは何でしょうか。

一人一人の仲間の強みを生かすこと、更に活かしあってもらうことです。別な言い方をするとメンバーの強みをお互い認め合いながら、チームとして働く状態を如何につくるかということです。マネジャーの役割はメンバーそれぞれの強みに何を加えることで、チームとしてのアウトプットが進化していくのかを考えて実行していくことだと思います。

どんな組織でも、一人でできることは限られており、大きな仕事を行う上ではチーム力の総和を高めることが重要です。しかしながら、異なる価値観を持つ人たちが集まると、時には衝突することもあります。でも、私はむしろ、そこから生まれる新しい発見・アイディアが大切だと考えています。同質の経験や価値観からは新たな価値は生まれにくいのではないでしょうか。もちろん、衝突といっても喧嘩ではないので、激しく建設的な議論をするという意味です。私は、「サイエンス、事実や根拠をベースにした議論」を行うことを心掛けてきました。

もう少し具体的に言えば、相手の立場や考えの背景を、まずは事実として正確に把握すること、相手がなぜそう考えるのか、その主張の根拠や根本を理解することが重要です。その上で「その主張から別の発展はあり得ないのか」を一緒に考えることで、新たな気づきに繋げられるのではないかと考えています。

自分が知らないことや足りないものを真摯に教えて欲しいという気持ちで相手に接することがチームワークの基盤となり、結果としてチームとしてより良いアウトプットを生み出すのではないでしょうか。

仮説を持ち、まずトライ、そして次につなげることが大事

Q. 特に若手の部下に限るとどうでしょうか。マネジャーとして何か心がけていることはありますか。

仕事を進める上では、自分の為、部門の為にではなく、会社にとって良いことかということ自問自答し、まず主体的にやってみることが重要だと思っています。マネジャーとしては「自分なりの仮説を持ち、上手く行かなくても良いので、やってみた後で検証し、次に繋げること」を勧めています。良い意味で「考えすぎない」、「スピードを大切にする」ということでしょうか。

それと、場合によっては『やらない、やめるという選択肢もある』ことを示すのもマネジャーの重要な役割です。自分の経験や価値観に固執しすぎると、とにかくやることそのものが目的化してしまうことがあります。バランス感覚を持った姿勢で仕事に臨むことで、自分では気づいていなかった新しい価値に到達できることを伝えていきたいですね。